第458章 このいまいましいぽっちゃりくん

「二少はご機嫌が悪いのですか?」夏川清美は車に乗り込んで尋ねた。

健二は頷いて、「どうしてご存知なのですか?」と聞いた。

「あなたの体から青草の香りがするから分かったわ」

「え?」健二は一瞬戸惑った後、理解して「お気をつけてお帰りください」と言った。

夏川清美は頷き、男性が怒っている理由を大体察していた。

自分のせいだ。

そう思うと、夏川清美の気持ちは暗くなった。

屋敷に戻ると、車がまだ本館に着く前に、ブドウ棚の下にいる雲おばさんが見えた。健二に車を止めてもらい降りると、二つのツルツルした頭が目に入った。それぞれの手にブドウを一粒ずつ持っていた。

夏川清美は二人の小さな子供たちを見て、面白そうに雲さんと藤堂さんに「これはどういうことですか?」と尋ねた。

「二少が、なぜ一人は髪の毛があって一人はないのかと聞いて、それで久美も坊主にしてしまったんです」藤堂さんは、自分の息子を連れてきた初日にこんなことになるとは思っていなかった。

夏川清美は一瞬固まり、二つの小さな坊主頭を見て、呆れて軽く頭を叩いた。「彼は本当に...」末期症状ね。

「これも良いわ、すっきりして」雲おばさんは夏川清美を軽く睨んで、それから久美を彼女の腕の中に押し込んだ。「早く抱っこして。もう少ししたら私じゃ手に負えなくなるわ」

「久美ちゃん、いたずらっ子さん、また雲おばあちゃんを困らせたの?」夏川清美は小さな子を抱きしめながら、頬を子供の鼻に押し付けて尋ねた。

久美は半日ママに会えなかったので、夏川清美を見て嬉しそうに口を開け、下の方に生えてきた真っ白な二本の歯を見せ、甘くて可愛らしい表情を浮かべた。

夏川清美は思わず小さな頬にキスをしたが、首筋が濡れるのを感じた。不思議に思って横を向くと、小さな子が手に持っていたブドウを潰し、その汁が夏川清美の着替えたばかりの上着に付いているのが見えた。

昼に着替えたばかりの夏川清美は「...」

「あはは、いたずらっ子、ママの服を台無しにしちゃったわね。ママに新しい服を買ってあげなきゃね!」雲おばさんは夏川清美の表情を見て、面白そうに久美をからかった。

全く悪いと思っていない久美ちゃんは、雲さんが話しかけてくるのを見て嬉しそうに小さな手を夏川清美の肩に叩きつけ続け、そして夏川清美の肩にも紫色のブドウ汁が付いてしまった。