第481章 月ヶ池邸でバーベキュー?気が狂ったの?

医科大学の学生たちが最も憧れる場所と言えば、学院から程近い月ヶ池邸だろう。中の景色は素晴らしく、三日月湖もあるという。しかし、それは私有地で、誰も足を踏み入れたことがない。それなのに、岡田千明は林夏美のために、自分が月ヶ池邸の人間だと嘘をついたのだ。まったく笑止千万な話だ!

この一件の張本人である神崎裕美も思わず口元を緩めた。岡田千明がこれほど愚かだとは思わなかった。

夏川清美は、岡田千明の小さな顔に申し訳なさそうな表情が浮かび、目が赤くなっているのを見て、手を伸ばして彼女の肩を叩いた。「大丈夫よ」

「はっはっは、厚顔無恥なら結城財閥だってあなたたちのものになるでしょう。まして月ヶ池邸なんて!」矢崎葵は矢崎家の傍系で、先日夏川お爺さんが弟子を取ると知った時、すっかり興奮し、矢崎碧里と張り合おうという気持ちもあった。矢崎家から誰かが選ばれることを期待していたのに、最後には太った女子に横取りされてしまった。しかもその太った子は同じクラスの生徒で、ずっと胸に溜めていた怒りを、夏川清美を侮辱する機会を探っていた。