午後五時半、岡田千明は生きる気力を失ったように顔を上げた。「あやねえさん、私は漢方医学に向いていないかもしれません」
鈴木真琴は何も言わなかったが、その表情が既に答えを示していた。彼女も向いていないかもしれない。
お爺さんは二人を一瞥し、珍しく怒らず、むしろ辛抱強く二人を見つめた。「一日で百種類の薬の外観、効能、薬効を暗記させるのは、確かに無理な要求だったな。これは来週の課題とする。来週の土曜日に確認しよう」
二人は密かにほっと息をついた。この師匠にもまだ人情味があるようだ。
傍らで見ていた夏川清美は、薄く微笑みを浮かべながら、心の中でお爺さんも確かに年を取ったと感じた。昔なら覚えられなかったら、叩かれていたはずだ。
夕食後、健二が迎えに来た。
夏川清美はお爺さんを見て、「じゃあ...私たち行きます?」
「行け行け!」お爺さんは手を振り、いかにも面倒くさそうな様子だった。
夏川清美はそれを見て、前に出てお爺さんを抱きしめた。
実は、お爺さんが優しくなっただけでなく、自分も変わったことに気づいていた。
以前は去る時はさっさと去り、後ろを振り返ることもなかった。でも今は毎回去る時、お爺さんの老いた顔を見ると、心がどこか切なくなる。
一度死んでから、やっとお爺さんの厳しい外見の下に隠された深い愛情を理解し始めた。
また初めて、このお爺さんが彼女のために少しずつ譲歩し、自分の頑固さを少しずつ手放し、学校で弟子を取り、月ヶ池邸を訪れ、結城陽祐と木村久美を受け入れようとする姿を見た。
「お爺さん、木村久美に会いたくなったら、いつでも健二に迎えに来てもらってください。月ヶ池邸に引っ越してきてもいいですよ」夏川清美はお爺さんの痩せた体を抱きしめながら、小声で耳元に囁いた。
お爺さんは夏川清美が自分を抱きしめるとは全く予想していなかった。彼の長年の教育方針には抱擁という概念がなく、それは外国人のものだと考えていた。若い頃は妻さえ抱きしめたことがなかった。孫娘に抱きしめられた瞬間、体が硬直し、表情が呆然となった。佐藤清美が耳元で話すまでようやく我に返り、目が突然潤んだ。
しかし長年の習慣で優しい言葉を口にすることができず、「誰が月ヶ池邸なんか行くか。あの小悪魔に会いたくもない」