第510話 今夜は少し多めに食べていいよ

木村久美を寝かしつけた後、夏川清美が階下に降りると、お爺さんがまだ座っていた。

この一ヶ月間、夏川清美は岡田千明と鈴木真琴たちと大会に出場していて、お爺さんの所に行く時間がなかった。前に電話をしたとき、頑固なお爺さんが怒るかと思ったが、まさか自分から来てくれるとは。

「ふん、小さい子が寝たから、今度は大きい方の相手をするのかい?」お爺さんは夏川清美が降りてくるのを見て、反対側から来た陽祐さんを怒ったように見つめた。この男は自分から孫娘を奪おうとしているように感じられた。

「いいえ、もちろんお爺さんと一緒にいますよ」夏川清美が答えると、心の中で、まさに老人から子供まで、一人一人が手がかかると嘆いた。

彼女は本当に大変だった。

「食事だ」結城陽祐が簡潔に促した。

夏川清美はそこで気づいた。午後の試合が終わってから今まで、まだ食事をしていなかった。額に手を当てながら、お爺さんの方を見て、「少し待っていただけますか?」

「私も食べたい」お爺さんは当然、清美を空腹にしておくのは忍びなかったが、ただ待っているのも嫌だった。

しかし彼が言い終わるか終わらないかのうちに、結城陽祐が遠回しな言い方もせずに断った。「あなたの分は作っていません」

「お前は...」お爺さんは言葉に詰まり、それから夏川清美の方を向いた。「お前が作ってくれ」

「彼女は料理ができません」結城陽祐が夏川清美の代わりに答え、心の中で思った。冗談じゃない、私のぽっちゃりくんはまだ私に料理を作ったことがないのに、他の男のために作るわけがない。

「誰が彼女はできないって言った。私は...とにかく腹が減った」お爺さんは言い過ぎそうになり、孫娘の料理の腕前を思い出して、急いで言葉を切った。

夏川清美は合わせて百歳以上の二人を見て、弱々しく手を挙げた。「先に少し食べてもいいですか?」

グゥ。

彼女がそう言い終わるや否や、お腹が頼もしく鳴った。

これで夏川お爺さんと結城陽祐はすぐに火種を消した。

結城陽祐は直接夏川清美を食堂に連れて行き、お爺さんは慌てて後を追った。

「座っていて、私が盛り付けてくる」結城陽祐が自然に言い終わると、キッチンへ向かった。