結城陽祐が入ってきた時、夏川清美が加藤迅の上に覆いかぶさっているのを見て、その表情は一瞬にして吹雪の日のように暗くなった。
夏川清美は残された理性で立ち上がろうとしたが、加藤迅に引き止められた。「うん、清美ちゃん、愛してる、行かないで、僕から離れないで……」
この告白があまりにも突然で、夏川清美の頭の中が轟いた。
先ほど加藤迅の言葉から自分のことを好きだと感じ取れたものの、それは今この瞬間、彼が彼女の耳元で「清美ちゃん、愛してる」と言った時の衝撃には遠く及ばなかった。
一瞬、夏川清美はその場で固まってしまい、加藤迅の唇が近づいてきた時になってようやく我に返り、顔をそらした。男の唇は彼女の肩をかすめた。
次の瞬間、夏川清美は部屋の中で急激に下がった温度を感じ、体が震えた。そして、どこからか力が湧いてきて、相手を突き飛ばし、よろめきながら振り返った。「陽祐さん、説明させて……」
結城陽祐は、キャミソールドレス一枚だけを身につけた夏川清美を無言で見つめ、琥珀色の細長い瞳には薄い冷気を帯びていた。
そのとき健二が入ってきた。「若旦那、記者が……」
「出ていけ!」健二が部屋の状況を把握する前に、結城陽祐の一喝で慌てて頭を下げて退出した。
夏川清美は足取りが不安定で、苦労しながら結城陽祐に手を伸ばした。「陽祐さん、聞いて、あなたが見たような状況じゃないの……」
男の暗い表情と怒りの様子を見て、彼女は心配になったが、薬の影響で体が言うことを聞かず、さらに悪いことにベッドの加藤迅がしつこく絡んでくる。
彼女は結城陽祐に手を伸ばし、説明しようとし、助けを求めようとしたが、近くに立つ男は冷たい表情で彼女を見つめるだけだった。
その視線に夏川清美の心は刺すように痛んだ。「陽祐さん……」
「清美ちゃん、行かないで、君が僕を愛してるのは分かってる、全部分かってる、僕も君を愛してる……」加藤迅はさらに酔いが回ったようで、林夏美と夏川清美の区別もつかず、まだ夏川清美を引っ張ろうとしていた。
夏川清美は彼を避けようとして、よろめいて床に強く倒れた。
結城陽祐の体が一瞬こわばり、前に出ようとしたが、夏川清美のセクシーなキャミソールとベッドの上で絶え間なく告白を続ける加藤迅を見て、一歩も動けず、かすれた声で呼んだ。「鈴木真琴。」