第523章 二少の自己反省は失敗

「久美ちゃん、すごいわ!」夏川清美の目から憂いの色が消え、前に這っている小さな子に向かって拳を上げて応援した。

小さな子は周りの雰囲気を感じ取り、励まされたかのように、夏川清美の方へ這い続けた。

とはいえ、這うというよりは、這いずり回っているような感じだった。

一方、久美より4ヶ月ほど年上のすみちゃんは、大人たちの笑い声を聞いて、より元気よく這い、最後にはカタツムリのような久美の前で止まり、「あー…」と声を出した。

久美はそれを聞くと、再び地面に寝そべり、顔を石田墨の方に向けて、「あーあー!」

「あーあー…」

「あーあーあー!」

「…」

二人の小さな子は会話をしているかのように、一方が「あー」と言えば、もう一方が「あーあー」と返し、そうやって話し合い、どんどん楽しくなっていった。

夏川清美は初めてこのような光景を目にし、しばらく呆然としていたが、思わず笑い出してしまった。「雲おばさん、彼らは何を話しているんですか?」

「私にもわからないわ」雲さんは手を広げた。

藤堂さんは笑いながら通訳した。「たぶん、這う?這わない!もう少し這う?嫌だ!って感じかしら」

「ははは、じゃあ結局這うの、這わないの?」夏川清美は大笑いしながら近づき、息子に尋ねた。

小さな子は本当に疲れたようで、地面に平らに寝そべり、小さな頭を横に向けて、だらしなく夏川清美を見つめていた。

夏川清美は息子のそのふわふわした怠け者の様子に耐えられず、手を伸ばして抱き上げた。

這う練習という困難な課題から解放された久美は嬉しくなり、夏川清美の腕の中でぴょんぴょん跳ね、嬉しそうに二本の小さな歯を見せた。

夏川清美は小さな子を支えながら、昨夜から抑え込んでいた気持ちが、ようやく少し和らいできた。目元には優しい光が細かく散りばめられていた。

結城陽祐は健二を追い出した後、胸の中の怒りが収まらず、テーブルを拳で叩いた。近くに置いてあった携帯電話が地面に落ちる音を立てた。しばらくして落ち着きを取り戻し、無傷の携帯電話を拾い上げ、何気なく開くと夏川清美からの一連の絵文字が目に入った。

抱っこ要求、高く持ち上げて欲しい要求、キスの要求と続き、心の中で暴れていた野獣が突然静まり、携帯電話を握りしめたまましばらくしてから置き、書斎を出た。