しばらくの間、ぼんやりとドアの前に立っていたが、聞き慣れた足音が聞こえ、ふと顔を上げると、スポーツウェアに着替えた男性の姿が目に入った。
結城陽祐も夏川清美を見つめていた。
空気が一瞬凍りついた。
夏川清美は何か言いたかったが、喉が渇いていた。頭の中には男性と他の女性が親密に写っている写真、「宿泊」という二文字が何度も浮かんでは消えた。
言おうとした言葉も重くなり、男性の前に立っているだけでも困難なことになってしまった。
そして結城陽祐が口を開こうとした時、夏川清美は突然足を動かし、自分の部屋へと向かった。
結城陽祐は口を開きかけたが、自嘲的に口角を上げた。たった一晩帰らなかっただけで、彼女に対して何も悪いことはしていない。それなのに彼女は?加藤迅と同じ布団で寝そうになったくせに、今は彼より怒っている?