第528章 大丈夫、手を洗ってきたから!

夏川清美は自分を落ち着かせると、自分の頬を軽く引っ張って中に入った。

「あら、久美ちゃん、ママが来たわよ。ママって呼んでみて!」雲さんは夏川清美が突然入ってくるのを見て、久美ちゃんに言った。

小さな子は夏川清美を見てとても嬉しそうで、両手を上げて抱っこをせがんだ。

夏川清美は急いで前に行って小さな子を抱き上げ、「久美ちゃん、ママって呼んで、ママって呼んで。ママが夜においしいご飯作ってあげるわ、いい?」

「パパパパ...」小さな子は夏川清美の言葉が理解できたのかどうか分からないまま、ママと呼ばれてもパパパと言っていた。

雲さんは笑って、「当分は直らないみたいね」と言った。

夏川清美はこの小さなイタズラっ子がパパしか呼べないことにもう慣れていたが、以前より心が痛み、子供が父親に対して生まれつき持っている依存心をより一層理解していた。

「焦らないで。子供がパパやママを覚えたばかりの時は過渡期があるのよ。その後本格的に話し始めるから、その時にはもっと多くの音が出せるようになるわ。最初にパパと呼ぶのは悪いことじゃないわ。これからは何かあったらパパを頼るから、あなたは楽になるわよ」と藤堂さんは冗談めかして言った。

夏川清美は愛想笑いを返したが、入ってきてから一度も結城陽祐の方を見ていなかった。

二人の子供と少し遊んだ後、藤堂さんは気を利かせて言った。「私と雲おばさんで二人を連れて下で食事させましょう。あなたは運動が終わってから久美ちゃんと遊んでね」

「そうだわ、もう少しで久美ちゃんの離乳食の時間だったわね」雲さんも思い出したような様子で、久美ちゃんを抱き上げ、藤堂さん親子と一緒にジムの外へ向かった。夏川清美一人がヨガマットの上に少し気まずそうに座っていた。

しかし、入る時に夏川清美は既に心の準備をしていたので、少し呆然としただけですぐにいつものように運動を始めた。

以前、男性が教えてくれた運動の動きは既に上手くなっていて、それほど苦労せずにできた。すぐに運動に没頭していった。

結城陽祐はとても怒っていたが、自分にも非があることを考慮し、さらに昨夜帰宅せず、三流女優との噂まで立ちそうになったことを考えると、面子を保ちながらも、昼食後に特別に子供部屋に行って、二人の関係を和らげようとした。