授業の開始を告げるベルが鳴るまで、教室は静かにならなかった。
夏川清美が席に着いたばかりのところに、心理学の教師が入ってきた。
すると全員が授業に集中し始めたが、岡田千明だけが夏川清美の方に顔を向けて、「清美、知ってる?神崎裕美が休学したんだって。他の学部に教務主任をしている従姉妹がいるらしいけど、逃げ出したって。みんな、あなたに対する一件は彼女が計画したって言ってるわ。何か恨みでもあったの?」
夏川清美は驚いた。神崎昭江の件が学校でも噂になっているとは思わなかった。
少し考えてから夏川清美は頷いた。「彼女が誠愛病院を解雇されたのは、私に関係があるわ」
「本当だったのね。掲示板で見たんだけど、誠愛病院で患者から利益を得ていたって。それに、薬を間違えて患者を死にかけさせて、その上相手を中傷したって」岡田千明は噂話に夢中だった。
これらの詳細は夏川清美にはわからなかったが、病院があの時神崎昭江をあんなに早く解雇したのには、他の理由があったはずだと分かっていた。
「シーッ、ちゃんと授業を聞きなさい」医学心理学の教師が二度目に彼女たちを見たとき、夏川清美は岡田千明に静かにするよう促した。
岡田千明はようやく噂話をやめたが、それでも感嘆せずにはいられなかった。「あなたが二少様の婚約者だったなんて。入学式の出来事を思い出すと、すごく素敵。二少様はあなたのことを本当に愛しているのね」
夏川清美「……」
以前なら、この言葉を聞いて心が甘くなっていただろう。しかし昨日の出来事の後では、岡田千明の言葉を聞いても、心に苦さしか残らなかった。
十分に話し合えないまま、やっと授業が終わると、何人もの学生が集まってきた。矢崎葵も以前の敵対的な態度を一変させ、興奮した様子で「林夏美、あなた本当に事故で開胸手術をした女医なの?どうやってそんなことができたの?」
夏川清美は若い女の子の顔に浮かぶ興奮を見て、まるで以前自分を困らせた人が彼女ではなかったかのようだった。しかし心の中では嬉しく思った。彼女の理解する女子学生とはこういうものだと。
他人を気に入らないと思い、露骨に嫌悪を示し、こっそりと張り合おうとする。でも同時に、相手の才能に心から感服し、尊敬の眼差しを向けることもできる。
矢崎葵は神崎裕美とは違っていた。