授業の開始を告げるベルが鳴るまで、教室は静かにならなかった。
夏川清美が席に着いたばかりのところに、心理学の教師が入ってきた。
すると全員が授業に集中し始めたが、岡田千明だけが夏川清美の方に顔を向けて、「清美、知ってる?神崎裕美が休学したんだって。他の学部に教務主任をしている従姉妹がいるらしいけど、逃げ出したって。みんな、あなたに対する一件は彼女が計画したって言ってるわ。何か恨みでもあったの?」
夏川清美は驚いた。神崎昭江の件が学校でも噂になっているとは思わなかった。
少し考えてから夏川清美は頷いた。「彼女が誠愛病院を解雇されたのは、私に関係があるわ」
「本当だったのね。掲示板で見たんだけど、誠愛病院で患者から利益を得ていたって。それに、薬を間違えて患者を死にかけさせて、その上相手を中傷したって」岡田千明は噂話に夢中だった。