第550章 彼女は清美ではない

結城陽祐は加藤迅が生きていた時も嫉妬していたのに、死後までも嫉妬することになるとは思わなかった。

彼は加藤迅が佐藤清美と一緒に死ねることを妬み、なぜ二人が一緒にいたのかを考えることさえ避けていた。

しかし結城陽祐が考えないようにしても、メディアはそうはいかなかった。

前回の加藤迅と林夏美のスキャンダルは結城陽祐によってすぐに押さえ込まれたが、鋭い目を持つメディア関係者の多くは既に気付いており、そのため結城陽祐は多くの人々から嘲笑されていた。しかし、動画に映っていた女性のスタイルと以前の結城陽祐の婚約者の体型には差があったため、多くの人々はそれは誤報だと考えていた。

しかし今は違う。結城陽祐がここに立っていることと、彼の様子から、亡くなった女性が彼の婚約者であることはほぼ確実だった。

今、正陽様の婚約者と誠愛病院の院長である加藤迅が爆発現場で一緒に事故に遭ったことで、当然人々の想像を掻き立てることになった。

野村越は正陽様の表情を見て、怒りを抑えられなくなることを恐れ、「正陽様、冷静になってください。これは誤解があるのではないでしょうか」と言った。

結城陽祐は動かなかった。ただ一瞬の怒りと嫉妬の後、突然眉をひそめて加藤迅の体型を見つめた。遺体が運び出されたばかりで白布をかけられていなかったため、結城陽祐ははっきりと見ることができた。

この遺体は夏川清美と同様に爆発で顔が判別不能になっていたが、夏川清美の状態よりはやや良好だった。結城陽祐がその男性の遺体を見つめる中、周囲の人々は彼が悲しみに暮れているのだと思い、婚約者が他の男性と一緒に死んだことを知って遺体を傷つけるのではないかと考えていた。野村越でさえ、正陽様が警察やメディアの前で取り乱さないよう、その動きを警戒していた時、結城陽祐は突然「彼は加藤迅ではない」と口を開いた。

そう言うと、それまで女性の遺体を一目も見ようとせず、その死を受け入れず、他人にもその死を認めさせなかった男が突然大股で前に進み、女性の遺体にかけられた白布を一気にめくり上げ、鋭い目つきで遺体を一通り確認した後、大きな安堵とともに小声で呟いた。「彼女は清美ではない、清美ではない……」

結城陽祐は何度も繰り返し、最後には声を上げて笑い出した。「彼女は清美ではない、清美ではない!」