「陽祐さん、地下の出口で爆発があったようです!」野村越が答えた。
結城陽祐の声が一瞬上ずった。「地下の出口?」
「そうだと思います。」野村越が外の濃い煙を見上げながら答えると、陽祐さんが既に車から飛び降りているのを見て、慌てて後を追った。
結城陽祐の心臓が締め付けられるように痛んだ。自分に言い聞かせた。ぽっちゃりくんは大丈夫なはずだ。もうこんなに時間が経っているのだから、彼女がまだそこにいるはずがない。
しかし、自分を慰めようとしても、心の中に湧き上がる不安が彼を飲み込もうとしていた。震える手で夏川清美の番号を押すと、二回鳴ったが誰も出なかった。
「きっと私のことを怒っているんだ。」結城陽祐は小声で呟いたが、再びダイヤルを押す手は既に震えていた。かすれた声で野村越に命じた。「清美に電話をかけろ。」
野村越は急いで夏川清美の番号を押したが、一分後に結城陽祐に向かって首を振った。
結城陽祐の顔が青ざめた。この世界にそんな偶然があるはずがない。彼のぽっちゃりくんは一度生まれ変わることができ、そんな大きな運命を持っているのだから、簡単に何かあるはずがない。きっと電話に気付いていないか、怒って出ないだけだ。
いや違う。清美はあんなに分別があり理性的な人だ。最初の一、二回は怒って出ないかもしれないが、野村越からの電話なら必ず出るはずだ。だから周りが騒がしすぎて聞こえていないだけに違いない。
結城陽祐は自分を慰めながら小走りで中に入っていった。そのとき腕時計が振動し、すぐに通信を繋いだ。「一体何が起きたんだ?」
「誰かが地下の出口を爆破した。全員が中に閉じ込められている。今は中が混乱状態で、まだ爆弾が残っているかどうかも分からない。警察に連絡してくれ。」陸田亮典は急いで言った。中からは警察に連絡が取れず、結城陽祐に助けを求めるしかなかった。
結城陽祐は声が震えないように必死に抑えながら尋ねた。「人的被害は?」
「まだ分からない。だが出口に人がいた場合、あんな狭い場所では生存確率は極めて低い。今は相手の目的を突き止めることが先決だ。さもないと中にいる全員が危険な状態だ。」陸田亮典は深く考えずに、自分の判断を述べた。
結城陽祐は電話を切り、野村越に陸田亮典の支援を指示すると、野村黒澤に連絡を取った。「お前と鈴木真琴は清美と一緒にいるんじゃないのか!」