野村越が一目見た瞬間、目が赤くなった。こんな陽祐さんを見たことがあっただろうか?
彼と弟は陽祐さんと十年の付き合いで、同じ年齢とはいえ、陽祐さんに育てられたようなものだった。陽祐さんのあらゆる表情を見てきた。
冷たい表情も、紳士的な態度も、残忍な様子も、腹黒い面も見てきたが、こんなに取り乱した姿は見たことがなかった。
林夏美が陽祐さんにとって特別な存在だということは分かっていた。彼女は陽祐さんをより人間らしく、人間味のある人物にしていた。
ご主人様だけでなく、陽祐さんに長年仕えてきた部下たちも喜んでいた。しかし、目の前の光景を見て、野村越は少し後悔した。もし最初からこんな結末になることが分かっていたら、陽祐さんのために彼女を遠ざけるべきだった。陽祐さんの人生に彼女を登場させるべきではなかった。