林富岡は警察署を出るとすぐに結城陽祐に電話をかけた。
夏川清美との関係で結城陽祐を問い詰めることはできなかったが、それでも我慢できず、震える声で尋ねた。「あれは本当に清美ではないのですか?」
結城陽祐は林富岡に好感を持っていなかったが、警察署での彼の態度を聞いて珍しく反感を覚えなかった。「清美のことは私が処理します。」
「でも……」林富岡は確実な答えを得られず不安だったが、「でも」と言いかけて何を言えばいいのか分からなくなった。何を言っても適切ではないと気づいたからだ。清美の子供に会いたいとも思ったが、口に出すことができなかった。
しかし、このまま信州市に帰ることもできなかった。
電話を切ると、林富岡は警察署の近くのホテルを予約した。もし清美が本当に生きているのなら、彼女が戻ってくるのを待つしかなかった。