第582章 二少は花嫁を見た

都林市の田舎は美しかった。

特に彼らがいる辺りは、どこを切り取っても一枚の風景画になるほどだった。

一月に来たばかりの頃と比べ、今は三月に入ろうとしており、都林市の気温は京都よりもずっと高く、草が生い茂り、鶯が飛び交い、至る所に濃い緑が広がり、まるでモネの絵画のようだった。

しかし、結城陽祐にはこの至る所にある美しい景色を楽しむ余裕はなかった。

彼の気分は最悪だった。

一ヶ月前の確信に比べ、初めて茫然とした気持ちになっていた。

島にいた時、彼は今度こそ佐藤清美を見つけられると確信していた。

人は物事に希望を持たない時、期待値が低くなり、挫折も比較的受け入れやすくなる。オーストラリアにいた時、加藤迅が簡単に彼らを見つけさせないことは分かっていたので、その期間は辛かったものの、清美の居場所が見つからなくても、落ち込みは今ほどではなかった。