夏川清美は考えるまでもなく否定した。自分の性格や好みのタイプは、誰よりも自分自身がよく分かっていた。
結城陽祐は絶対に彼女が選ぶタイプではなかった。
「この体の元の持ち主が彼のことを好きだったのかしら?」夏川清美はそう言って、気づけば自然と転生という設定を受け入れていたことに気がついた。
「分からないけど、確かに君は彼のことが好きで、私との再会を拒んだんだ。それと、もう一つ正直に話しておきたいことがあって...」加藤迅はここまで言って、申し訳なさそうに俯いた。
夏川清美は頭が爆発しそうだった。結城陽祐のことが好きになって先輩との再会を拒んだなんて、自分は狂っていたのだろうか?
それに先輩が正直に話したいことって何?
「お爺さんは大丈夫なんだ。君が戻ってお爺さんを探しに行くのを恐れて、何かあったと嘘をついた。私たちが離れる前に夏川お爺さんは既に結城家に住んでいて、君が戻ったら...もう二度と出てこられなくなると思って...」加藤迅は最後の方を小さな声で呟いた。
夏川清美はそれを聞いて呆然と彼を見つめた。「お爺さんは生きているの?」
心の中の空白が再び埋まっていく。申し訳なさそうな先輩を見て、軽くため息をついた。「自分を責めないで。お爺さんが生きているならそれでいいの。生きているだけでいい。それで...私と彼はどうして別れたの?」
夏川清美の言葉を聞いて、加藤迅は本当の核心に触れる時が来たことを悟った。彼は全てが理解できず途方に暮れている夏川清美を見つめ、しばらくして漸く声を取り戻した。「君たちは私のせいで、別れたんだ。」
夏川清美はそれを聞いて少し驚き、理解できない様子で先輩を見つめた。
加藤迅は彼女が医科大学の学生医療技能コンテストで優勝したものの、女子学生の嫉妬による陰謀に遭った件を説明し、さらに結城陽祐が彼女が自分を助けたことを誤解した件について簡単に説明した後、顔に自責の念を浮かべて「清美ちゃん、君は転生後ずっと、自分の死が私に関係があると疑っていた...」
「そんなはずない!」加藤迅の話を聞いて、夏川清美はまるで他人の人生を聞いているような気がした。そして結城陽祐のような美しい男性がそこまで小心者だったなんて、恐ろしいと思った。そして先輩が彼女は自分の死が先輩に関係があると疑っていたと言うなんて?彼女はほとんど反射的に否定した。