第585章 パパ抱っこ、ママ抱っこ

結城陽祐は受け入れられない様子で清美ちゃんを見つめ、「DNA鑑定を承諾したのに、なぜまだ結婚式を挙げるんだ？」

夏川清美はその声に含まれる悔しさを聞きながら、美しすぎるが少し疲れた様子の男性を見つめた。気品のある雰囲気を纏っているが、どうして自分がこんな男性を好きになったのだろう？

これは全く自分の好みのタイプではない。

美しすぎる！

「二少、お控えください」加藤迅は先ほど氷窖に落ちたような心が再び蘇り、感情を抑えきれなくなりそうな結城陽祐に言った。

そのとき木村叔父さんも前に出て、英語で追い払おうとした。「申し訳ありませんが、ここから出て行ってください。あなたは歓迎されていません」

結城陽祐の目は怒りで燃えそうだった。彼はこのような状況に遭遇する可能性を予測していたが、予測と現実は違っていた。

夏川清美が自分を精神病患者を見るような目で見ているのを見て、彼は自分の心が氷の破片のように砕けそうに感じた。加藤迅という野郎はあまりにも陰険すぎる。彼は清美ちゃんの記憶を完全に消去したわけではなく、ただ清美ちゃんが生まれ変わった後の林夏美に関する記憶だけを消去したのだ。

これは全ての記憶を消去するよりも恐ろしい。

なぜなら清美ちゃんには完全な記憶の連鎖があり、林夏美の記憶を削除しても彼女に何の影響も与えないからだ。

そして今、夏川先生としての彼女は11ヶ月前に死んで19歳の女性に生まれ変わり、久美を産み、彼と婚約し、お互いに愛し合っていたと言っても、彼女はますます自分を精神病患者だと思うだろう。

これは完全な袋小路だ！

結城陽祐は深くため息をつき、加藤迅を見つめた。「俺が見つけ出した以上、君と彼女の結婚を許すと思うのか？」

「二少、清美ちゃんが愛しているのは私です。そんなに執着すべきではありません。彼女は最初から最後まで私を愛していて、私たちはずっと幸せでした。もし本当に彼女のことを思うなら、手放して、彼女が本当に望む幸せを与えるべきです。子供のことも、私と清美ちゃんにもできます」加藤迅はいくつかのことは隠しきれないことを知っていた。特に久美のことは、DNAを比較すれば全てが明らかになる。だから彼は先手を打って、結城陽祐を強欲な偏執狂として描こうとした。