神父は驚愕していた!
彼は生涯で数え切れないほどの結婚式を執り行い、多くの新郎新婦に祝福を与えてきた。もちろん、反対して花嫁を奪ったり、新郎を連れ去ったりする場面も見てきたが、教会で直接喧嘩が始まるのは初めてだった。
これは度が過ぎている!
神父は驚きの表情を浮かべ、「あなたたちは度が過ぎています。これは神への冒涜です!」と叫んだ。
そう言いながら、胸の前で何度も十字を切った。
結城陽祐は神父を横目で見上げ、立ち上がる気配もなく、地面に座ったまま息子の様子を見守っていた。
加藤迅はそれを見て、「恥知らずめ」と言った。
「お前ほどじゃない」結城陽祐は全く気にしていなかった。佐藤清美を見つけ、彼女と加藤迅の結婚を阻止できたのだから、これ以上の喜びはなかった。
恥知らずかどうかなど、彼には関係なかった。
「お前は...」加藤迅は深く息を吸い、地面に座っている夏川清美を見た。「清美ちゃん、大丈夫?」
夏川清美はようやく我に返り、腕の中の木村久美を見つめ、申し訳なさそうに師匠を見上げた。「すみません、私...」彼女は先ほど完全に本能的に動いてしまい、木村久美が傷つくのを見過ごすことができなかった。
「何も言わなくていい。わかっているよ」加藤迅は優しく言った。空っぽになった教会と怒り狂う神父を見上げ、胸が刺すように痛んだ。これは彼が清美のために用意した結婚式だったのに、今や全てが台無しになってしまった。しかもその元凶は未だに笑っている。深く息を吸い、加藤迅は目を伏せた。「清美ちゃん、家に帰ろう。君が僕の側にいてくれれば、結婚式のことは急ぐ必要はないんだ」
夏川清美は頷いた。彼女は心の中に様々な疑問を抱えていたが、結城陽祐よりも師匠を信頼していた。他人の結婚式を勝手に台無しにし、子供を取引材料にするような男が、どこが良いというのだろう?
あの美しい顔が台無しだ。
結城陽祐は呆然とした。次の瞬間、夏川清美が立ち上がり、木村久美を彼の腕の中に押し込むのを見た。「木村久美がどうしてここにいるのかわかりませんが、あなたの容姿も人柄も、私の好みではありません。二少様、これからは自重してください」
そう言って夏川清美は加藤迅の手を取り、教会の外へと向かった。