第595章 若奥様なら、言われても信じますか?

夏川清美は結城陽祐の体の上に覆いかぶさり、相手が目を覚まして意図的にそうしたのだと思い、いらだちを感じた。しかし、目を上げると男性はまだ目を閉じたまま、体温が高熱を帯びていた。

一目見た瞬間から彼女を魅了したその端正な顔立ちが目の前で大きく映り、怒りの後に戸惑いが押し寄せてきた。

彼女は先輩とさえ、こんなに親密になったことはなかった。

さらに悪いことに、夏川清美は目の前の光景に不思議な既視感を覚えた。まるで以前にも似たような場面があったかのように。

「清美...」

夏川清美は複雑な気持ちで男性の手を離そうとした時、昏睡状態の人が低い声で彼女の名前を呼んだ。

かすれた乾いた声は、なぜか聞いていて心が痛んだ。

夏川清美は心中穏やかではなく、より一層の罪悪感を覚えた。昨日はあんなに率直に言うべきではなかった。