第639話 陽祐さん、疲れた

手術は丸二時間半かかった。

夏川清美が手術室から出てきた時、結城陽祐が真っ先に駆け寄った。「清美、大丈夫?」

「大丈夫よ」夏川清美は額の汗を拭いながら、結城陽祐に微笑みかけた。そして近寄りたいけど躊躇している祖父とダニエルの方を向いて頷いた。「手術は成功したわ」

老人は椅子に崩れ落ちるように座り、ダニエルも深いため息をついた。やはり姉は最高だと思った。

一方、傍らにいたジョン先生は夏川清美を軽蔑的な目で見た。彼は手術を夏川清美が執刀したとは全く信じていなかった。きっと院長が手配した同僚たちのおかげで成功したのだろうと。

しかし次の瞬間、患者が手術室から運び出され、同僚たちが皆夏川清美の周りに集まり、尊敬の眼差しを向けていた。その中の一人の診療科部長は手術着も着替えずに、若い女性に熱心に声をかけた。「林先生、当院で働いていただけませんか?待遇は相談させていただきます!」