第658章 結城陽祐、あなたの節操はどこ?

「ふん。」夏川清美は福田美沙紀を可笑しそうに見つめた。これはどんな展開だろう、兄妹?

福田美沙紀は夏川清美の反応を見て、「なぜ不可能だと思うの?あの時、彼女は私たちの結婚を壊したのよ。結城新南は死ぬ前に信州市に行っていて、死後に矢崎若雅があなたを産んだわ。これらの偶然が多すぎると思わない?」

「それが偶然かどうかはわからないけど、あなたがとても利己的だということはわかります。あなたはその発言に証拠があるの?証拠がないなら、陽祐さんの気持ちを考えたことある?それに、あなたは木村久美に会ったことないでしょう。あの子は私たちの息子で、とても健康よ。」ここで夏川清美は一旦言葉を切った。「亡き人は既に去り、生きている者はこうして在る。お義母様が過去の苦しみに囚われているより、前を向いて生きていくべきです。まだお若いのですから、ご自身のために生きるべきです。陽祐さんについては、愛せないのなら、傷つけないでください。」

結城陽祐が近づいてきた時、夏川清美の力強い声が聞こえ、心が溶けそうになった。前に出て夏川清美の手を取った。

夏川清美は手の温もりを感じ、振り返ると結城陽祐が笑顔で後ろに立っているのが見えた。身に纏っていた殺気が急に消え、声が柔らかくなった。「朝はどこに行ってたの?」

「贈り物をね。」結城陽祐は簡潔に二言で答え、夏川清美を結城財閥の汚い争いに巻き込みたくなかった。

「午後は予定ある?」夏川清美は男の考えを理解し、先ほどの話題を避けて尋ねた。

「ないよ、屋敷に帰る?」結城陽祐は頷いた。

夏川清美は嬉しそうに、「うん。」

昨日の午後から息子に会えていなかった。

二人が自分たちの会話を終えて外に向かおうとした時、完全に無視された福田美沙紀の顔色が青くなったり白くなったりした。公の場でなければ、とっくに夏川清美に怒鳴り散らしていただろう。しかし、二人が話し終わるとすぐに立ち去ろうとし、自分を全く相手にしないことは予想外だった。ついに我慢の限界を超え、「林夏美、あなたは本当に手が込んでるわね!」

夏川清美は我に返り、ようやくここにまだ人がいたことを思い出した。福田美沙紀に対してあまり気にせず微笑んで、「私に手腕があっても、陽祐さんが心から望んでくれないと意味がないわ。」