結城陽祐は氷嚢を持って入ってきた。夏川清美はまだ怒って座っていた。
「いい子だから、こっちにおいで」結城陽祐は唇の端を少し上げ、清らかな声で人を魅了するような優しさを込めて言った。
夏川清美は傲慢に顔を背けて、男を見ようとしなかった。
結城陽祐の口元の笑みはさらに深くなり、夏川清美の側に寄り添って、「まず冷やそう。そうしないともっと腫れちゃうよ」
「ふん」夏川清美は鼻を鳴らした後で、自分がなんて子供っぽいんだろうと思ったが、男に良い顔を見せたくなくて、引き続き顔を引き締めていた。
結城陽祐は気にせず、彼女を腕の中に引き寄せ、氷嚢を夏川清美の腫れた部分に当てた。
「痛っ...」
夏川清美が痛みで声を上げると、結城陽祐はすぐに体を強張らせ、突然頭を上げて大輔さんに指示した。「病院へ行こう」