第698章 生きていることが何より大切
結城陽祐は深く息を吸い込んで、「理由は?」と尋ねた。
「上杉ちゃんが私の命なのよ。陽祐さん、ごめんなさい。あなたを助けることができなくて」結城蓮は母親が自分の娘を使って脅してくるとは思ってもみなかった。
「分かった」結城陽祐は電話を切った。姉が福田美沙紀を連れて行くことなど期待できるはずがなかった。
頭痛に悩まされ、眉間を押さえると傷も痛み出した。その時、書斎の外からノックの音が聞こえ、結城陽祐は反射的に佐藤清美かと思い、すぐに返事をしたが、入ってきたのは医療バッグを持った秋山綾人だった。
結城陽祐は驚いて、「なぜ君が?」
秋山綾人は医療バッグを持つ手が一瞬止まり、「何か問題でも?」
結城陽祐は答えなかったが、秋山綾人は既に医療バッグを開けていた。「二少様、包帯を替える時間です」