第741章 ボンボンにもボンボンの良さがある

病院。

矢崎碧里が診察室を出た時、誰かに見られている気がしたが、彼女は元々美しい容姿をしていたので、そのような視線には慣れていた。気にせずマスクを上げ直して病院の外へ向かいながら、頭の中では医師の言葉が響いていた。

「おめでとうございます、矢崎さん。妊娠5週+3日です。赤ちゃんは今のところ順調に発育しています。注意していただきたいのは…」

その後の言葉は矢崎碧里には全く聞こえていなかった。

あの日、ウォルドーフを出た後、彼女は惨めな姿で自分のアパートに戻り、二日間熱を出していた。意識が戻った時には避妊の時期を逃してしまっていた。一度だけでは妊娠しないだろうと根拠のない期待を持ち、しかも薬も飲んだのだから大丈夫だと思っていた。

今、人生からこのような強烈な一撃を受け、矢崎碧里は頭が真っ白になっていた。