第65章 過去の過ち

発表からたった1時間しか経っていなかったが、ケイトはずっとマリッサの顔を観察していた。

彼女が自分の成果を発表した時、マリッサの顔が青ざめた様子。シンクレア氏はあの部屋で起きたことを誰にも話すなと特に言っていたけれど。でも、この報酬のことは含まれていないはずよね?

彼が話していたのはアミールと彼の財産のことだった。最初は怒っていた。シンクレア氏がこの女のせいで婚約者をいじめていると。

でも結果は素晴らしかった。カフェをくれたのよ!

わぁ!

今夜は祝わなきゃ。

マリッサは発表前ほど明るく元気そうには見えなかったけど、今日は自分の日だった。

ケイトの日!

彼女は欠伸をして、それを抑えた。ここはベッドじゃなくてオフィスの席だと自分に言い聞かせた。

ああ、もう!今日は何もする気が起きない。夢のカフェのことで頭がいっぱいだった。

「マリッサ」ディーンの部屋に向かう彼女を見かけて呼びかけた。

「ん?」ブルネットは忙しそうに答え、まだ手に持った書類に目を落としたままだった。

「メニューについて提案が欲しいんだけど」ケイトは作り笑いを浮かべた。

「どのメニュー?」マリッサはようやく書類から目を上げた。「もうメニューは決まってたんじゃなかった?」

ケイトは無邪気に首を振り、ほとんど椅子に寄りかかるように座った。「イベントの話じゃないの。私のカフェのメニューについて助けが必要かもしれなくて。手伝ってくれる?」

彼女は無邪気なふりをして瞬きをした。

マリッサは一瞬彼女の顔を見つめ、それから親切そうに言った。「いつでもいいわよ、ケイト」

ケイトはその笑顔を消し去りたかった。彼女のどこがそんなに特別なの?シンクレア氏が彼女のために借金を払おうとするなんて。

マリッサは自分ほど美しくもない。なのになぜ彼はそうするの?

オフィスでの彼は、マフィアの親分以上だった。ハラスメントをする人!

大企業の社長らしくなかった。

彼の血走った目は今でも想像できる。彼がどれほど彼女を窓から突き落としたがっていたか、誰も知らない。その考えに彼女は震えた。

何か裏話があるはずだ。それを知る必要がある。ラファエル・シンクレアは結婚しているのに、ただの零細起業家の女の子にこれほど気を遣うなんて。ありえない!