176- ようこそカンダートンへ、ママ!

「私はよく旅行に行くんです。どこでも行ったことがありますよ」と、廊下の真ん中で、ヴァレリーは小さな群衆に囲まれて立っていた。

通りかかる人は誰でも、その群衆に加わっていった。彼女はもはや時間の使い方がわからなくなり、これまでの年月で行ってきた旅行自慢を始めた。

「シンクレア夫人はどんな場所に行かれたんですか?」と、ある従業員が尋ねた。従業員に「シンクレア夫人」と呼ばれるたびに、彼女は血管を駆け巡る奇妙な喜びを感じた。

「まあ、指では数えきれないわ。最近行ったのはヨーロッパ一周よ。パリ、ミラノ、モンテカルロ...本当にたくさんの場所を巡ったわ」

デリンダとデンゼルは視線を交わした。ここ数日、二人はあまり会話を交わしていなかった。

群衆は目を見開いて、熱心に彼女の話に聞き入っていた。

「きっとたくさんショッピングされたんでしょうね?」とケイトが興奮して尋ねた。「そういう場所は女性にとって夢のような場所ですもの。特にお金があれば」とケイトの目には憧れの色が浮かんでいた。

彼女は手を振って笑った。「その通りよ、ケイト。あそこはショッピングパラダイスなの」と手を上げ、光を受けて輝く見事なダイヤモンドのブレスレットを見せた。「これは買う必要もなかったの。モナコの友人からの些細な贈り物よ。本当に素晴らしい品なの」と彼女は笑いながら、みんなに見せた。「そう思わない?」

ピーターも少し身を乗り出し、その顔には明らかな感嘆の色が浮かんでいた。「すごいですね。すばらしい友人をお持ちですね!」

ヴァレリーはその反応に大変満足していた。「みなさん、ショッピングやプレゼントの話をしているけど、もう一つ付け加えたいことがあるわ」と意味深な視線を送りながら、にやりと笑った。「セレブリティよ!」

予想通り、周りからため息が漏れた。

「まあ、すごい。セレブリティですって?」

ヴァレリーは頷いた。「ミラノでジョルジオ・アルマーニと夕食を共にしたのよ。信じられる?彼は私のために何か特別なものをデザインしたいと言い張ったの。想像できる?」

彼女は得意げな表情で髪をかき上げた。驚きに輝く彼らの顔を見るのを楽しんでいた。

デリンダは深く息を吸い込んだ。「アルマーニと夕食?信じられない!」