そのとき。
他の生徒たちは、新入生の本性について何も知らないことに気づき始めた。
最初は、孤高なせいでいじめられている美人だと思っていたのに、まさか新入生は土屋兄さんよりも荒っぽい性格だとは!
土屋兄さんでさえ、そこまでやったことはない。
「よくも!よくもこんなことを!私の目の前で、公然と騒ぎを起こすとは!」
生活指導主任は怒りで目が据わり、灰原優歌を指差して怒鳴った。
天下の道理がない!土屋遥は手に負えないとしても、ただの転校生くらい、懲らしめられないはずがない!
「先生、申し訳ありません。そんなに怒らないでください。」
目の前の美しすぎる少女は、気の強そうな瞳を伏せ、とても従順そうに見え、許してあげたくなるような衝動に駆られた。
そのとき。
事情を知らない英語教師が入ってきて、一目で新しい転校生だと分かった。
彼女は眉をひそめて言った。「主任、子供は転校したばかりで、環境にも慣れていないのに、あまりにも追い詰めすぎではないですか?」
こんなに大勢の前で叱られて、どれだけ辛いことか。
その瞬間。
クラスは静まり返った。
なんと人の心を惑わす達人だ。
生活指導主任の顔は赤くなったり青ざめたり!
「演技か?今すぐ保護者に電話して!お前の本性を見せてやる!」
生活指導主任は怒りに任せて立ち去った。
職員室。
生活指導主任は灰原優歌の個人情報を見つけ、電話をかけた。
柴田浪は基地で練習中で、声は目覚めたばかりの低音だった。
「はい?」
「こんにちは、永徳の生活指導主任ですが、お聞きしたいことが……」
「優歌がいじめられてるのか?!」
柴田浪は突然目が覚め、すぐに尋ねた。
生活指導主任はこめかみがピクピクした。「灰原優歌は学校で、悪意を持って他の生徒を……」
「でたらめを言うな。殺人放火でもしたって言うのか?」
柴田浪はこんな馬鹿げた話を初めて聞き、嘲笑った。
これが永徳の生活指導主任?よくもこんな嘘をつけるものだ。
「保護者の方、灰原優歌の本当の姿をしっかり見ていただく必要があります。」
生活指導主任はこの一件で死にそうになった。
柴田浪はそれを聞いて、目つきが次第に冷たくなった。
「生活指導主任さんね?私の妹はコミュニケーション障害がある人なんです。もし学校で何かあったら、誰一人として責任逃れはできませんよ!」
言い終わると、柴田浪は電話を切り、イヤホンを付けて配信を続けた。
しかし、ずっと落ち着かない様子だった。
優歌はここ数日、引っ越しの準備をしている。昨日電話で柴田裕也に何とかするよう頼んだのに、まだ何の動きもない!?
まあいい、配信が終わったら聞いてみよう。
柴田浪はさっきの生活指導主任のことを思い出し、思わず軽蔑した。
「なんてクソ教師だ。」
その言葉が、うっかりマイクに拾われてしまった。
配信を見ていたファンたちは大騒ぎになった。
【ちょっと待って、誰のこと?】
【Crushさっき先生と電話してたよね?妹さんの先生?】
【え、ちょっと今ネット繋がったとこ、どういう妹?】
【Crushは柴田家の坊ちゃんだよ。柴田裕香知ってる?柴田家のお姫様で、皆から可愛がられてて、うぅ柴田様すごく妹思い!このシスコン!】
【ワロタwwwあるチームキャプテンが基地でチームメイトの向上心のなさを叱りながら、裏では妹の先生をディスってるwww】
……
2時間もしないうちに。
#crush シスコン#がトレンド入りし、柴田裕香の羨ましい生活まで掘り返された。
柴田家唯一の令嬢で、幼い頃から学業優秀で、賞を取りまくり、シスコンの兄たちまでいる。これはなんて羨ましい人生なの??!
追記:次男柴田裕也。