第24章 私を怒らないで

そのとき。

他の生徒たちは、新入生の本性について何も知らないことに気づき始めた。

最初は、孤高なせいでいじめられている美人だと思っていたのに、まさか新入生は土屋兄さんよりも荒っぽい性格だとは!

土屋兄さんでさえ、そこまでやったことはない。

「よくも!よくもこんなことを!私の目の前で、公然と騒ぎを起こすとは!」

生活指導主任は怒りで目が据わり、灰原優歌を指差して怒鳴った。

天下の道理がない!土屋遥は手に負えないとしても、ただの転校生くらい、懲らしめられないはずがない!

「先生、申し訳ありません。そんなに怒らないでください。」

目の前の美しすぎる少女は、気の強そうな瞳を伏せ、とても従順そうに見え、許してあげたくなるような衝動に駆られた。

そのとき。

事情を知らない英語教師が入ってきて、一目で新しい転校生だと分かった。

彼女は眉をひそめて言った。「主任、子供は転校したばかりで、環境にも慣れていないのに、あまりにも追い詰めすぎではないですか?」

こんなに大勢の前で叱られて、どれだけ辛いことか。

その瞬間。

クラスは静まり返った。

なんと人の心を惑わす達人だ。

生活指導主任の顔は赤くなったり青ざめたり!

「演技か?今すぐ保護者に電話して!お前の本性を見せてやる!」

生活指導主任は怒りに任せて立ち去った。

職員室。

生活指導主任は灰原優歌の個人情報を見つけ、電話をかけた。

柴田浪は基地で練習中で、声は目覚めたばかりの低音だった。

「はい?」

「こんにちは、永徳の生活指導主任ですが、お聞きしたいことが……」

「優歌がいじめられてるのか?!」

柴田浪は突然目が覚め、すぐに尋ねた。

生活指導主任はこめかみがピクピクした。「灰原優歌は学校で、悪意を持って他の生徒を……」

「でたらめを言うな。殺人放火でもしたって言うのか?」

柴田浪はこんな馬鹿げた話を初めて聞き、嘲笑った。

これが永徳の生活指導主任?よくもこんな嘘をつけるものだ。

「保護者の方、灰原優歌の本当の姿をしっかり見ていただく必要があります。」

生活指導主任はこの一件で死にそうになった。

柴田浪はそれを聞いて、目つきが次第に冷たくなった。

「生活指導主任さんね?私の妹はコミュニケーション障害がある人なんです。もし学校で何かあったら、誰一人として責任逃れはできませんよ!」

言い終わると、柴田浪は電話を切り、イヤホンを付けて配信を続けた。

しかし、ずっと落ち着かない様子だった。

優歌はここ数日、引っ越しの準備をしている。昨日電話で柴田裕也に何とかするよう頼んだのに、まだ何の動きもない!?

まあいい、配信が終わったら聞いてみよう。

柴田浪はさっきの生活指導主任のことを思い出し、思わず軽蔑した。

「なんてクソ教師だ。」

その言葉が、うっかりマイクに拾われてしまった。

配信を見ていたファンたちは大騒ぎになった。

【ちょっと待って、誰のこと?】

【Crushさっき先生と電話してたよね?妹さんの先生?】

【え、ちょっと今ネット繋がったとこ、どういう妹?】

【Crushは柴田家の坊ちゃんだよ。柴田裕香知ってる?柴田家のお姫様で、皆から可愛がられてて、うぅ柴田様すごく妹思い!このシスコン!】

【ワロタwwwあるチームキャプテンが基地でチームメイトの向上心のなさを叱りながら、裏では妹の先生をディスってるwww】

……

2時間もしないうちに。

#crush シスコン#がトレンド入りし、柴田裕香の羨ましい生活まで掘り返された。

柴田家唯一の令嬢で、幼い頃から学業優秀で、賞を取りまくり、シスコンの兄たちまでいる。これはなんて羨ましい人生なの??!

追記:次男柴田裕也。