第33章 誰があなたにここに来ることを許したの、お嬢さん?

「なぜそんなことを聞くの?人を連れて行くだけじゃないの?」

灰原優歌は言い終わると、落ち着いてナイフを捨て、その場を去ろうとした。

しかし思いがけないことに。

暗い廊下から出る前に、目の前に端正で気品のある男性が現れた。

二人の視線が交差する。

灰原優歌は「……」

現行犯で捕まってしまった。

灰原優歌にはなぜかわからないが、このバーでこの男性に会うのは良くないような気がした。

久保時渡の瞳は濃い黒色で、感情を読み取ることができなかった。

「渡様……」

森谷之浩は大喜びしたが、まだ口を開く前に。

その後。

男性が軽く笑い、スーツの下の長く禁欲的な脚で、少女の前まで歩み寄った。

彼は関節の浮き出た手をポケットからだらしなく伸ばした。

罰として彼女の額を軽く叩いた。「誰が君にここに来ることを許可したんだ、お嬢さん?」

この光景を見た他の人々は、驚愕した!

渡様はこの女の子と知り合いなのか!??

すぐさま、森谷之浩に従っていた手下たちは、全身が冷や汗で震えた。

もし渡様が、さっき彼らがこの女の子に何をしようとしていたか知ったら……

「私、十九歳です。」

灰原優歌は反射的に反論した。

「大学生?」男性は淡い瞳を落として、ゆっくりと尋ねた。

「……」

この時になって初めて、灰原優歌は自分が留年生であることを実感した。

久保時渡は軽く森谷之浩たちを見渡し、しばらくして、優歌は頭上から声が聞こえた。

低くて磁性のある、耳元がくすぐったくなるような声。

「少し待っていて、お兄さんが用事を済ませるから。」

……

個室の中。

森谷之浩は唾を飲み込み、足が震えながらソファの横に跪いていた。すでに酔いは覚めていた。

彼が直接自分を処罰しに来るのを待っていた。

本当に思いもよらなかった、この女が渡様と何か関係があるなんて!

もし知っていたら、絶対にこんなことはしなかった!!

間もなく。

個室のドアが開き、彼の目の前に強い白い光が差し込んだ。

その後。

目に入ったのは、長身でシャツとスーツパンツの気品ある男性が、ゆっくりと彼の前まで歩いてきた。

久保時渡は余裕を持って、彼の前に跪き、恐怖に満ちた表情の森谷之浩を見つめた。

「渡様、本当に知りませんでした、あの方があなたの人だとは!