吉田東雄が去った後。
隣にいた柴田の父が躊躇いながら口を開いた。「久保さん、あなたは……」
「今日は急いで来たので、贈り物を選ぶ時間がありませんでした」久保時渡は落ち着いた口調で言った。
ホールにいた人々は一瞬驚いた。
そして、久保時渡が柴田おじい様の前に歩み寄り、整った指で新しい協力契約書をテーブルに置くのを見た。
「これは優歌への追加の贈り物です」
言葉が落ちた。
柴田の父と母は顔色を変えた!
そして、ずっと声を出す勇気がなく、目に恨みを秘めていた柴田裕香は顔が真っ青になり、唇を噛みしめた!
彼女は目の前の高貴で気ままな男を信じられない様子で見つめた。
「久保さん、これは……」
柴田おじい様も一瞬驚き、契約書の内容を見ようとはしなかった。
「先ほど柴田夫人から、優歌は手編みのマフラーだけを柴田大旦那に贈ったと聞きました」
男は薄紅の唇を曲げ、無関心そうな口調で、しかし率直で目立つように、彼の甘やかしぶりを隠さずに言った。
「確かに少し子供っぽいですね。でも、少女が好意を表現する方法は、いつも率直なものです。
しかし、柴田夫人がふさわしくないとお考えなら、私が優歌の代わりにふさわしいものを用意しました」
これを聞いて。
柴田おじい様は思わずその契約書を見たが、すぐに立ち止まった。
それは久保集団と柴田集団の3年間の協力計画だった。
柴田集団の資質では、久保集団のような頂点に立つ集団との協力は絶対に不可能だということは周知の事実だった。
このような集団との協力は、柴田集団の人脈を広げることができるだけでなく、この協力がもたらす利益だけでも柴田集団の数年分の総生産額に匹敵する……
さらに、この契約の利益は、ほとんど柴田集団が大部分を占めていた。
「久保さん、この贈り物は重すぎます。受け取れません」
柴田おじい様はすぐに拒否した。
この契約を受け取ったら、孫娘を売るようなものではないか??!
そしてこの時。
柴田の母たちは聞いて、その契約がもたらす可能性のある価値を大体推測できた。
「久保さん、なぜ……優歌に追加の贈り物をしようと思われたのですか?」柴田の母は表情を和らげた。
柴田の母も、目の前のこの男が自ら面倒を招くような人だとは思わなかった。
しかし、彼の身分では、灰原優歌を好きになるはずがない。