第43章 お兄さんが連れて帰る

柴田の母は深いため息をつき、優雅な奥様としての姿を取り戻した。

「川瀬社長」

柴田の母は川瀬社長に軽く頷いた。

川瀬社長は「この生徒は柴田夫人の...」と言った。

柴田の母の目に一瞬の動揺が走り、必死に落ち着きを取り戻して「最近、家に引き取った女の子です」と答えた。

その言葉に、灰原優歌は冷笑を浮かべながら彼女を一瞥し、すぐに視線を逸らした。

柴田の母は柴田裕香を常に偏愛していた。

他の三人の兄たちよりも甚だしいほどだった。まして、途中から戻ってきた灰原優歌なんて言うまでもない。

だから柴田の父が灰原優歌の身分を公表しようと提案した時、柴田の母が真っ先に反対した。

「あなたたちの件は、すべて聞きました」

柴田の母は深く息を吸い、灰原優歌を見つめながら無表情で言った。「もし本当なら、彼女には然るべき法的責任を取らせましょう」

そう言いながら、柴田の母は終始灰原優歌を見つめていた。

灰原優歌が弱みを見せるのを待っていた。

彼女の手は震えていた。

どう言っても、この出来の悪い子は自分の実の娘なのだ。灰原優歌が弱みを見せれば、介入して解決するつもりだった。

でもその後、灰原優歌を転校させて、裕香に影響が及ばないようにするつもりだった。

その時。

突然ドアが蹴り開けられた。

柴田浪は走ってきたらしく、息を切らしており、シルバーグレーの短髪が乱れていた。

「優歌はどこだ!?」

柴田浪は校長に呼ばれて来たのだが、柴田の母を見て意外そうだった。

「母さん?」

柴田の母は不機嫌な顔をした。「あなた、何しに来たの?」

柴田浪の目が次第に落ち着きを取り戻し、灰原優歌の前に立って川瀬社長に向かった。

「優歌があなたの息子を傷つけたって言うけど、証拠はあるんですか?」

柴田浪は嘲るような口調で、整った顔に冷たい表情を浮かべていた。

「柴田浪、黙りなさい!」柴田の母の表情はさらに暗くなった。

柴田浪は柴田の母を一瞥し、冷笑して、灰原優歌の手を取った。

「優歌、行こう。三兄さんが連れて帰る」

「柴田浪、あなた!」柴田の母は目を真っ赤に見開いた!

そして。

灰原優歌は動かず、彼の手を振り払った。

「私がやりました」

灰原優歌は冷静に言った。

柴田浪は体が硬直し、しばらくしてようやく反応した。

彼の目が熱くなった。