その時。
学校を出たばかりの土屋遥が目にしたのは、このような光景だった。
いつもは自由奔放な隣の席の彼女が、無表情で黙り込んでいる姿を初めて見た。その様子は魂の深部からの拒絶を漂わせていた。
土屋遥は思わず拳を口元に当て、また笑みを漏らした。
このプレゼントは、確かに彼女のようなクールな隣席の子には相応しくないな。
しばらくして。
灰原優歌も口を開いた。微笑みながら丁重に断る。「ありがとう。でも、こういう玩具は好きじゃないから、他の人にあげてください」
この時、灰原優歌はまだ、柴田裕也が柴田裕香と同じプレゼントを用意したのだと思っていた。
しかし、灰原優歌は本当にこういうものが好きではなかった。
特に、可愛さのポイントが分からないこのバカみたいなクマは。
「ダメだ、これは優歌のために特別に買ったんだ」柴田裕也はきっぱりと断り、端正な顔立ちには真剣な表情が浮かんでいた。
彼は少し身を屈め、灰原優歌と目線を合わせ、色っぽい声で優しく諭すように言った。「優歌、クマちゃんかわいいよ。持って帰ってくれない?」
その言葉が落ちた。
瞬間!
周りの女子たちの理性が崩壊し、悲鳴を上げそうになった!
どこからこんな神様みたいなお兄さんが現れたの?なんでこんなに素敵なの!?
もう耐えられない!!!
そして、傍にいた柴田浪のイケメンな顔が一気に曇り、酸っぱさと嫉妬心が込み上げてきた。
ふん。
ドラマに何本か出ただけで調子に乗りやがって??!
自分の妹に手を出すなんて!柴田裕也のこの野郎!!
「……」
灰原優歌はまぶたを動かし、周りの強い視線を感じ取ると、さらにこの間抜けなクマとの関係を断ち切りたくなった。
「ご飯食べに行かないの?」灰原優歌は柴田裕也の言葉を何気なく遮った。
すると柴田裕也は逆に機嫌が良くなったようだった。
優歌が自分を食事に誘ってくれた。
四捨五入すれば、優歌はもう自分を許してくれそうだ!!
「うん、レストランはもう予約してある」
そう言って、柴田裕也は意味ありげに柴田浪を一瞥し、上品に微笑んで言った。「ただし、席は二人分しか予約してないけどね」
柴田浪:「……」
柴田裕也以上に非情な人間がいるだろうか?
「お兄さん、灰原優歌と一緒に行くの?」