柴田浪はまだ気づいていなかったが、隣の柴田裕也は眉をひそめ、カメラと柴田裕香の接近を感じ取った。
彼は唇を引き締め、黒いマスクを上げ、長い脚を踏み出して柴田浪の横に立った。
柴田浪で柴田裕香を遮るように。
しばらくして。
気づいた柴田浪は柴田裕也を見て、「?」
ほら見て、これが人のすることか?!
しかし次の瞬間。
柴田浪も気づいて、急いで柴田裕香を避けた。
この光景がカメラに収められると、とても奇妙に見えた。
柴田裕香が横に立ち、むしろ二人のイケメン兄が寄り添って立っている。
まるで...偽物の兄妹のようだった。
柴田浪と柴田裕也が自分に近づきたがらないと感じた柴田裕香の表情が一瞬にして険しくなった。
彼女は強張った笑顔を浮かべ、柴田裕也たちに近づこうとして、「二兄さん、三兄さん、あなたたち...」
突然。
柴田裕也はマスクを外し、墨色の瞳に光を宿したまま、学校の門に向かって歩き出した。まるで柴田裕香が存在しないかのように。
この光景に、柴田裕香は完全に耐えられなくなり、顔色は鍋底のように真っ黒になった!特に門を出て行く灰原優歌を見たときには!
灰原優歌がなぜ出てきたの?!
柴田裕香は突然悪い予感がしたが、すぐに自分を遮った。「まさか、そんなはずない!二兄さんが灰原優歌を迎えに来るはずがない...」
しかし。
その言葉が落ちるや否や、遠くの柴田裕也は既に灰原優歌の前に歩み寄り、直接彼女を親しげに抱きしめた。
「優歌、二兄さんは君が恋しかったよ。」
そう言うと、柴田裕也は黒いマスクを下ろし、長身を屈めて彼女の肩に軽く頬を寄せた。
この光景に、周りの人々は呆然とした!
数秒の静寂の後。
「ああああ本当に柴田裕也?!柴田裕也が迎えに来たのは灰原優歌??!」
「まさか!私てっきり、柴田裕也は柴田裕香を迎えに来たのかと思った...」
だって、これは公認の柴田家のお姫様じゃないの?
「ねえ、気づいた?さっき柴田裕也と柴田浪は柴田裕香とほとんど話さなかったし、柴田裕香は噂ほど可愛がられてないみたい...」
さっきの柴田裕也の熱烈な抱擁は、本当に人々を驚かせ、羨ましがらせた。
だって柴田裕也は業界でも噂を立てないことで知られていて、これが初めて'異性'に親しげな態度を見せたのだから。