第148章 こっそり遺産を残す

「お父さんが灰原優歌にこんなに良くしてあげても、優歌はお父さんの安全なんて気にもしていないわ!」

「お母さん!」

「月江!」

三人の声が同時に柴田の母の言葉を遮り、強い反対の意を示した。

この状況に、柴田の母は目を見開き、信じられないという表情を浮かべた。

その後、彼女は続けて冷笑い、「そう、今じゃあなたたちまで灰原優歌のことを心配し始めたの??

でも私が間違っているかしら?彼女は何をしても裕香には及ばないし、柴田家に迷惑をかけるだけよ!」

言葉が落ちた。

灰原優歌の唇の弧は変わらず、相変わらず物憂げな態度のままだった。

しかしその時。

誰も予想していなかったが、病床から弱々しい声が聞こえた。

「馬鹿を言うな、私の優歌は誰にも劣らない」

同時に、灰原優歌も一瞬動きを止めた。

柴田の母たちは更に振り向いてお爺さんを見た。

「お父さん、目が覚めたんですね...」柴田の母の顔色が悪くなった。

「さっきの話は全部聞こえていた。ただ目が開けられなかっただけだ」

お爺さんの口調はまだ弱々しく、顔色は青ざめていたが、表情は冷淡だった。「みんな出て行け、優歌と話がある」

「お父さん...」柴田の母は諦めきれない様子。

「柴田晴樹、お前の嫁の躾ができないなら、一緒に出て行け!」

お爺さんは柴田の父を見つめ、明らかに怒りを露わにしていた。

今回、柴田の母がお爺さんの前で灰原優歌をこのように非難したことは、明らかにお爺さんの逆鱗に触れた。

柴田の母は顔面蒼白となり、最後は柴田の父に連れられて出て行った。柴田裕也と柴田浪も自ら部屋を出た。

……

「優歌、お爺ちゃんが悪かった、お前をちゃんと守れなくて」

お爺さんは震える手を伸ばし、灰原優歌の手の甲を握り、優しく叩いた。

「そんなこと言わないでください」灰原優歌は思わず笑った。

「お前の両親のことは、もう構わない」

お爺さんは目を赤くし、また独り言のように呟いた。「お爺ちゃんは一生、悪いことはしてこなかったのに、どうしてうちの優歌がこんな辛い思いをしなければならないのか...」

「お爺ちゃん、辛くなんかありません」灰原優歌はお爺さんの感情の変化に気づき、すぐに慰めた。