「柴田夫人」という声を聞いて、柴田の母はむせ返りそうになった。
「私のことをお母さんと認めないつもりなの?そう?!」
柴田の母は激怒し、顔を蒼白にして柴田裕也を見つめた。
「優歌が誰を認めるなら、僕もその人を認める」
柴田裕也は眉を上げ、何かを思い出したように灰原優歌の袖をまくり上げ、「怪我してない?お兄さんが見てあげる」
「裕也!」
柴田の母の顔が青くなったり赤くなったりした。「これはどういうつもり?!」
「柴田浪を叩くのは、もう何も言いません。でも優歌に手を出すなら、私が何をするか保証できません」
柴田裕也は穏やかな口調で言い、確認が終わると灰原優歌の袖を直してあげた。
柴田の母たちの印象では、柴田裕也は家のことに関わりたがらない人で、まして誰かをこれほど守ることなどなかった。