事態は突然起こりすぎた。
その後。
担任の先生は周りに人が集まっているのを見て、「では、職員室で話し合いましょうか?」
……
職員室。
柴田の母は心配そうに柴田裕香を見つめ、優しい声で「裕香、大丈夫?何ともない?」
柴田裕香は灰原優歌を一瞥し、唇を噛んで「大丈夫よ。お母さん、彼女と喧嘩しないで。もしおじいちゃんが知ったら……」
柴田の母はそれを聞いて、さらに灰原優歌への嫌悪感を募らせた。
彼女は冷笑を抑えられなかった。これが実の娘だというのに!おじいさんの寵愛を盾に、好き放題、無法無天!!
自分が手塩にかけて育てた裕香とは比べものにならない!
「灰原優歌、今回はごまかして逃げられないわよ!あの時言ったでしょう。林家の人たちに会ったら、親子の縁を切るって!」
柴田の母は再び冷笑して言った。「おじいさんに言いつけるつもりなら、どうぞご自由に。私は皆に、私の娘は柴田裕香一人だけだと言いますから。」
その言葉が落ちた瞬間。
入り口から声が聞こえた。「誰が一人だって?」
他の人々が反応する前に、若くて端正な男性が長い脚で部屋に入ってきた。
彼はシンプルな黒のTシャツにジーンズを合わせただけの姿だったが、完璧なプロポーションが際立ち、美しい切れ長の瞳は黒く輝いていた。
その後。
柴田裕也は黒いマスクを外し、その端正で高慢な顔を見せた。
柴田裕也を見た柴田の母は、彼が柴田裕香のために学校に来たのだと思った。
柴田の母は思わず笑みを浮かべ、怒りは半分以上消えていた。「裕也、あなたが家族と絶縁して、こんなに長く家に帰らなかったのに、裕香のために……」
「ベイビー、誰が君をいじめたんだ?お兄さんが片付けてやるよ。」
柴田裕也は低く甘い磁性のある声で言いながら、自然に灰原優歌を抱きしめた。その目には冷たい光が宿っていた。
傍らの担任の先生は「……」
まずい、この一家は学校で派閥争いを始めるつもりか。
数日前、柴田裕也が彼を訪ねてきて、自分は灰原優歌の実の兄だと言い、何かあったら直接自分に電話するように言っていた。
しかし担任の先生は、電話をかけた結果が仲裁ではなく、味方につくための応援だとは思わなかった!??
「裕也!」
柴田の母は顔色を変え、鋭い声を上げた。「あなたも私との縁を切るつもりなの??!」