男は思わず低く笑い、煙草の箱を無造作に開けると、ソファーに慵懒に寄りかかった。
禁欲的な薄い色の瞳には冷たさだけが残り、上がった目尻は人を魅了し、知的で不遜な様子で「どうしようもないだろう?可愛い子を困らせるわけにもいかないしな」
「じゃあ、なぜ屋敷に連れてきたの?」老夫人は彼の言葉を聞いて、詰問した。
男は指で煙草の灰を弾き、軽薄な態度を全く隠そうとせずに「彼女が機嫌を悪くしているから、なだめる方法を考えているところだよ」
「……」
老夫人は久保時渡が一体何を考えているのか分からなかったが、どこか様子がおかしいと感じていた。
「そうそう、彼女の家族のことは聞かないでください」
久保時渡は柴田家のことについて簡単に説明した。老夫人が後で余計なことを聞かないようにするためだが、詳しくは話さなかった。