「院長、柴田さん、これを見てください……」
若い医師は顔を引き締め、携帯電話を二人に差し出した。
トレンドの一位に上がっていた。
#柴田浪アンチ#
原因は柴田浪のアンチが病院のセキュリティシステムに侵入し、まず柴田大旦那の薬を取り替え、さらに挑発的に病院の公式アカウントをハッキングして、堂々と公表したことだった。
さらには、自分が存在する限り、柴田浪の平穏な生活は終わりだと広く宣言した。
このようなアンチの行為は海外では珍しくないが、国内ではほとんど聞いたことがなかった。
しかし今。
柴田浪は目を真っ赤にし、思わず歯を食いしばり拳を握りしめた。
「このクソ野郎……」
自分を憎むなら自分を狙えばいい。なぜ家族を巻き込む??!
「浪、深く考えるな。この件はしっかり調査する」柴田裕也は彼の肩を叩いた。
「これは私の責任だ」
柴田浪は深いため息をつき、眉間にしわを寄せたまま、自責の念を隠せない様子で言った。
柴田浪が芸能界に入った当初、アンチはファンよりも多かった。
みんな柴田浪はコネで業界に入ったと言っていたが、実際には柴田家は一度も柴田浪の仕事に関与したことはなく、すべて彼自身の努力で這い上がってきたのだ。
そのため、後に柴田浪は数々の大会で自身の実力を証明し、世界レベルの大会で何度も優勝を果たした。
しかしそれでもなお、アンチたちは柴田浪の実力を認めようとしなかった。むしろ、過激な行動をとる者も少なくなかった。
まるで柴田浪がこの世から消えてしまえばいいと願うかのように。
「何が責任だ?俺のアンチの方が多いんだぞ。そんな気取るな」
柴田裕也はそう言うと、手術中の手術室を見つめ、思わず深いため息をついた。「とりあえず様子を見よう。おじい様は必ず無事だ。
他のことは、明日警察に届けよう」
「ああ。犯人が分かったら、絶対に許さない」柴田浪の目には殺気が満ちていた。
しかし、ずっと黙っていた柴田裕香は、心の中で妙な爽快感を覚え、不気味なほど喜びを感じていた。
灰原優歌が柴田家で誰にも手出しされないのは、柴田おじい様が後ろ盾になっているからじゃないの?
もし、柴田おじい様に何かあったら、灰原優歌にどんな資格があって柴田家で威張れるというの?