第140章 お姉ちゃんこそが子供

「澄辰のうさぎさんなの?」

「うん!」

灰原優歌は小さな子供が彼女の部屋に入り込み、ベッドサイドのコンセントを探し、慣れた様子でうさぎのライトをベッドの横に置くのを見ていた。

電源を入れると、うさぎから柔らかな白い光が放たれ、雰囲気までなんだか温かく可愛らしくなった。

自分の作品を見て満足げな様子の小さな子は、灰原優歌を嬉しそうに見上げ、彼女の足に抱きついて甘えるように言った。

「これで、うさぎさんが澄辰の代わりにお姉ちゃんを守ってくれるの!お姉ちゃんはもう怖くないよ!」

灰原優歌は小さな子の可愛らしさにほとんど溶けそうになり、しゃがんで抱きしめてキスをした。

「ありがとう、澄辰。でも澄辰にうさぎさんがなくなっちゃうけど、どうするの?お姉ちゃんは子供のものを取っちゃいけないわ」

「澄辰は男の子だもん、子供じゃないよ。女の子は一生子供なの。だからお姉ちゃんの方が子供なの」

澄辰は甘い声でそう言うと、すかさず灰原優歌にキスをして、顔を赤らめながら走り去った。

その姿に、灰原優歌は思わず頬杖をつきながら、澄辰が去った方向を見つめ、目尻を下げて微笑んだ。

この家族は、人を魅了するのが家学の伝統なのかしら?

……

廊下の角で。

「お兄ちゃん、うさぎさんをお姉ちゃんにあげたよ!お姉ちゃんはもう怖くないの!」

壁に寄りかかっていた長身で端正な顔立ちの男性は、何気なく「うん」と返事をし、身を屈めて小さな子の頬をつまんだ。

「うん、よくやった」

兄に褒められ、小さな子はさらに嬉しそうに、跳ねるように自分の部屋へ戻っていった。

一方、久保時渡は長く綺麗な指でライターを弄び、カチカチと軽い音を立てながら、冷淡な質感を醸し出していた。

彼は微かな明かりの漏れる部屋の扉を一瞥すると、夜の闇の中で人の心を揺さぶるような低くて怠惰な笑い声を漏らし、その後、廊下から立ち去った。

……

深夜。

病院内。

「これは一体どういうことだ?何が起きたんだ???」

病院は慌ただしい雰囲気に包まれていた。

「看護師が薬を間違えたようです。五階の個室の柴田大旦那が今、救急処置を受けています」

医師は表情を曇らせながら、院長に説明した。

「どうして薬を間違えたんだ!?調査しろ、早く真相を究明しろ!」院長は怒鳴った。