「怒ってるの?お兄さんは優歌を笑ってるんじゃない、ただ可愛いと思っただけだよ」
久保時渡は禁欲的な長い脚を真っすぐに伸ばし、だらしなく半分折って軽くしゃがんでいた。淡い色の瞳には冷たさだけが残り、上がった目尻が人を魅了する。
その知的で軽薄な様子は、どこか寛容さを感じさせる。人の心を乱すことを止められない。
「違います。私は眠れます。お兄さんに寝かしつけてもらう必要はありません」
灰原優歌が言い終わると、久保時渡は柴田裕也が贈ったプレゼントのことを思い出した。
彼は灰原優歌が持ってきたバッグを一瞥し、目尻の笑みを消しながらも、依然として無関心そうに「うん、分かった」と言った。
久保時渡は鼻筋が少し赤くなった少女を見つめ、突然声を低くして笑い、余韻を引く。
「これでいい。先に戻るよ。さもないと夜遅くにお婆様に見られたら、説明のしようがない。