「やはり私の良い娘だね。こんな時、お前だけが頼りになるわ」
柴田の母は深く感動した。
最近、柴田裕香に対して意図的に距離を置いていた柴田の父でさえ、目が光り、柴田裕香を見る目が優しくなった。
「ご苦労様、裕香」
柴田裕香は笑顔を見せ、隣にいる柴田裕也と柴田浪をもう一度見て、「家族の間では、お礼なんて言う必要ないわ。
でも、お父さんお母さんがお礼を言いたいなら、後で私の友達が来るから、直接彼にお礼を言ってね」
「この子ったら、本当に抜け目がないわね」
柴田の母は思わず笑い、手を伸ばして彼女の鼻を軽くつまんだ。「でも良かった、今回はお前がいてくれて」
柴田裕香はくすりと笑い、目の奥に不気味な光と得意げな表情が浮かんだ。
灰原優歌が柴田家に戻ってきたところで、どうだというの?
結局、何をしても私には敵わないでしょう?
兄たちとお父さんお母さんが、私こそが一番役立つ娘だと気付けば、灰原優歌は相変わらず見捨てられる運命よ!
しばらくして。
玄関で突然声が聞こえた。
「裕香はいる?」
柴田裕香は聞き覚えのある声を聞いて、すぐに顔に笑みを浮かべた。
彼女はすぐに玄関に向かい、清秀な顔立ちの男子学生に微笑みかけた。「高司、来てくれたのね。お父さんとお母さんがちょうどお礼を言いたがってたの。早く入って」
林高司は自分の憧れの人にそう言われ、その瞬間、まるで浮き立つような気分になったが、すぐに疑問が湧いてきた。
ちょっと待って、何のお礼???
林高司が事情を聞く間もなく、柴田裕香は熱心に彼を引っ張って、柴田の父母の前まで連れて行った。
「お父さん、お母さん、この人が林高司よ。林副社長の息子」柴田裕香は林高司に対してとても親しげな態度を示した。
彼女は林高司が自分のことを好きだということを知っていた。でも、今回の件で彼を利用できなければ、彼に構うこともなかっただろう。
「林さん、今回は本当にありがとうございます。私たち柴田家を大変助けていただいて」柴田の母は優雅に微笑んで言った。
しかし。
さっきまで緊張していた林高司は、柴田の母の言葉をはっきりと聞いて、すぐに我に返った。「ちょっと待ってください、柴田おばさん、どういう意味ですか?私がどこで助けたんですか??」