第157章 お兄さまの怒りはまだ収まっていない

電話をかけたばかりの時、バーのような騒がしい雰囲気の中で、久保時渡が聞こえないはずはないと灰原優歌は思った。

「……」

彼女は突然、何か悪いことをして捕まったような気分になった。

灰原優歌は眉間を動かし、また一声の猫の鳴き声を聞いた。

振り向くと、通りに座っている茶トラ猫が見えた。とても哀れそうな様子だった。

その光景を見て。

灰原優歌は突然唇の端を上げ、茶トラ猫の隣に座り、頬杖をつきながら、人と猫が道端に座っていた。

二人とも惨めそうだった。

茶トラ猫は恐らく、外で暮らしているのに、自分の真似をして可哀想な振りをする人がいるとは思わなかったのだろう。突然毛を逆立てて怒った。

猫は「ニャー」と鳴いて、最後に尻尾を振って逃げていった。

「なんてケチなの」

灰原優歌は物憂げに笑いながら、心の中で考えていた。この後久保時渡が彼女がここに座っているのを見ても、さすがに路上で説教はしないだろう?