「分かってる」
灰原優歌は丁寧に手の血を拭いながら言った。「私が通報したの」
その言葉に、吉田麻奈未は呆然とした。最初に浮かんだ考えは、灰原優歌が狂ったということだった。
自分で通報して自分を逮捕させるなんて!??
でも。
その直後、吉田麻奈未自身も予想していなかったことに、彼女の最初の反応は、灰原優歌の手を掴んで外に走り出すことだった!
灰原優歌が状況を把握する前に、吉田麻奈未に引っ張られて半ブロックも走っていた。
最後に、二人は人混みの多いバーに入った。
周りが安全だと感じた後、吉田麻奈未は灰原優歌の手を離し、大きく息を吐いた。「大丈夫、もう大丈夫」
「なぜここにいるの?」これは灰原優歌が初めて彼女のことを積極的に尋ねた。
「家族が私に見合い相手を紹介してくれて、芸能人として、異性と盗撮されやすい場所には行けないから」