第174章 私の娘が不当な扱いを受けるのは見過ごせない

「渡様……」

柴田裕也は一瞬固まった。久保時渡が来るとは思わなかった。

なぜ来たのだろう?

その瞬間。

全員の視線が彼に注がれ、みな呆然としていた。

その男の端正で優雅な容姿、完璧に仕立てられたスーツ姿、そして何とも言えない威圧感を放つ冷ややかな眼差しは、生まれながらの威厳を漂わせていた。

「こっちに来なさい」

久保時渡の低く心地よい声が、無造作に響いた。

そして、全員が困惑している中、灰原優歌は前に出て、目の前の気品のある冷たい男性の手を取った。

彼女は目を細めて、「お兄さんはどうしてここに?」

その言葉が落ちた。

突然、柴田裕也は全身が凍りついた。優歌が長い間、次兄を呼んでいなかったことに気づいた……

久保時渡は薄い瞼を持ち上げ、淡々とした目線を彼女に向けた。彼は怠惰そうに手を伸ばし、懲らしめるように彼女の頬をつねった。