第173話 嘘が暴かれる

西尾翔も予想していなかった。柴田裕也が人前で彼に手を出すなんて。彼は恐怖で胸がいっぱいだった。

そしてその時。

ドアの隙間から覗いていた人々は、目を見開いて見ていた!!

柴田裕也が灰原優歌のために人を殴るなんて!??

このお兄さんマジで神すぎる!!?

「やばい、灰原優歌ってどんな神様みたいなお兄さんを引き当てたの??さっき柴田裕也が優歌のために西尾翔を殴ったの!??」

「こんなお兄さんがいるのに、灰原優歌は何を考えてるの?西尾翔なんかに目をつけるなんて!??」

「柴田裕也が灰原優歌を引き受けるなんて、本当に運が悪いよね。柴田裕香と比べたら、灰原優歌なんて泥棒に追い銭だよ」と、嘲笑する声も上がった。

ドア付近での議論は止まらなかった。

……

その時。

静かなオフィスの中で、軽い笑い声が特に目立った。

灰原優歌は西尾翔の前に歩み寄り、意味ありげに口角を上げて、「こんなに命知らずで、自分がバカだと思わない?」

「お前!」

西尾翔は灰原優歌の眼差しに何故か動揺したが、すぐに我に返り、悪意を込めて言った。「灰原優歌、認めたくないの?怖いの?」

灰原優歌は目を上げる気もなく、「私たち高校一年の時から知り合いだったわね」

「へぇ、意外と認めるんだ?」西尾翔も胸の内で計算していた。

今や灰原優歌は柴田お嬢様で、価値も上がっている。もし彼が柴田家に彼と優歌の関係を認めさせることができれば、彼も裕福な家庭とつながることができる……

西尾翔の目に不気味な光が走った。

しかし、傍らにいた橋口美月の目には、それが暗い表情となって映り、両手を強く握りしめた。

「私が七組に転校してから、あなたの目が離せなくなった?」

灰原優歌は突然、彼が手紙で書いた言葉をゆっくりと繰り返し、笑みを浮かべて「そう?」と言った。

その言葉が落ちると。

西尾翔の表情が凍りつき、目に動揺の色が走った。

「確かに、私たちは以前も同じ学校だったけど、お互いを知らなかった。私も、あなたが転校してきてから、あなたに気付いただけよ」

西尾翔はまだ得意げで、この言葉に隙がないと思っていたが、傍らの橋口美月と雅子はそれを聞いて、顔が青ざめた。

「そう」

灰原優歌は意味深な笑みを浮かべ、生徒指導主任を軽く見やって「主任先生、聞こえましたか?」