その時。
全員が無意識のうちに吉田麻奈未の視線を追い、一瞬にして、その目に驚きの色が浮かんだ。
近づいてきた少女は黒髪に白い肌、Vネックのスリムな赤いドレスを着て、腰を締め、極上のセクシーさを醸し出していた。
魂を奪うような瞳は、笑みを浮かべているものの、その笑みは目元まで届かず、どこか慵懶な色気を漂わせていた。
一体どこの令嬢なのか、こんな美貌が本当に存在するなんて??!
その時。
柴田裕香の目に強い嫉妬の色が浮かび、瞳を伏せた。
この二人が知り合いだなんて!!?
しばらくして。
柴田裕香は笑いながら言った。「吉田さん、会場で知り合った友達って、彼女だけじゃないでしょう?」
吉田麻奈未は思わず柴田裕香を見つめ、その瞳には不穏な色が漂っていた。
この令嬢は、どこからそんな優越感が湧いてくるの?
もう大物の前で見せびらかしたのに、まだ気づいていないの???
「そう、私が会場で知り合った友達は、彼女だけよ」吉田麻奈未は冷笑し、まったく気にしない様子で言った。
柴田裕香はそれを聞いて、思わず歯を食いしばり拳を握りしめた。
さっきまで吉田麻奈未に付き合って話をして、自分の味方にしようと計画していたのに。
今になって分かったことは、この吉田麻奈未が進んで灰原優歌のような人物と友達になろうとしていたなんて!!?
この女は本当に狂っている!
柴田裕香だけでなく、傍らにいた森谷美貴たちも、非常に不愉快そうな表情を浮かべていた。
森谷美貴は作り笑いを浮かべながら言った。「吉田さん、もしかして灰原優歌に騙されているんじゃないの?彼女のどこがいいの?そんな人と友達になるなんて??」
その言葉を聞いて、吉田麻奈未の目が一気に冷たくなった。
その眼差しに森谷美貴は何故か恐怖を感じ、目を逸らした。
「価値のある人は、どこもかしこも価値があるのよ」
吉田麻奈未は眉を上げ、冷笑を漏らしたが、目の中の冷たさは消えなかった。
それを聞いて。
森谷美貴は顔色を悪くしたが、吉田家を怒らせる勇気もなかった。
突然、柴田裕香が口を開いた。
「そうならば、優歌、あなたも必ず吉田さんの先ほどの言葉を証明できるでしょう?」
灰原優歌は唇の端を上げ、彼女に視線を向けた。「柴田裕香、人として余裕を持ちなさいよ」