「柴田家のこと?」
灰原優歌の目には波風がなく、その声色からも何も読み取れなかった。
「お兄さんは、どうやらずっとコンピューター分野の専門家との協力を探しているようですね。私たちの研究所以外にも、他の計算研究所や専門プラットフォームにも連絡を取っているようです」
その言葉を聞いて、灰原優歌の目に思考の色が過ぎった。
彼女は兄の柴田陸信のことをよく知らなかった。しかし、柴田氏が破産した理由は、会社のデータ漏洩と無関係ではないことを覚えていた。
会社のデータ漏洩は、内部の人間が買収された可能性もあれば、技術者による悪意のある操作である可能性もある。
もし後者だとすれば、それは以前柴田おじい様を傷つけた例のアンチと同じ性質のものだ。
「どんな条件を提示されたの?」灰原優歌が尋ねた。