内田和弘は唇を少し上げ、永徳の唯一のインターンシップ枠を手に入れたことで、気分が良かった。
「ゆっくり休んで、時間があったら会いに行くよ」
そう言って、内田和弘は避けられずに灰原優歌のことを思い出し、眉をひそめた。
灰原優歌が柴田家に戻ってから、柴田家は混乱に陥っていた。まさに因果応報というべきだ。
ただし、灰原優歌があんなに運が良くて、林院長に育てられるとは思わなかった。
「うん!」
柴田裕香は内田和弘の態度が変わらないのを見て、心が甘く感動した。
その後、内田和弘に慰められ、安心して電話を切った。
しかし、ほぼ同時に。
内田和弘は別の電話を受けた。内田の母からだった。「和弘、さっきどうして電話が通じなかったの?」
「裕香と電話してた」と内田和弘は答えた。
それを聞いて、内田の母は笑顔がこぼれた。「裕香のことが好きだって言ってるのに、認めようとしないのね。あの時、裕香と喧嘩して、灰原優歌と婚約しようとしたりして。
でも良かった、柴田家は気にしなかったわ」
灰原優歌の名前を聞いて、内田和弘の顔から笑みが消えた。「母さん」
「はいはい、もう彼女の話はしないわ。私の息子はこんなに優秀なんだから、それにふさわしい女の子を見つけないと」
内田の母も灰原優歌のことを気に入っていなかった。軽蔑した口調で、「和弘、安心して。今回A.M.に入れたことで、お父さんもとても喜んでるわ。正社員になったら、柴田夫人に会いに行って、あなたと裕香の婚約の話をするわ」
内田和弘の眉間のしわが緩んだ。「ありがとう、母さん」
確かに、灰原優歌は今では裕香より美しいかもしれない。でも、彼の妻は外見だけではいけない。
灰原優歌のような前科のある人間には、彼の妻になる資格はない。
……
電話を切った後、内田和弘は車を降りてA.M.計算研究所の入り口に向かった。
しかし、運悪く、目を上げると灰原優歌が彼の方に歩いてくるのが見えた。
内田和弘は眉をひそめ、灰原優歌を嘲笑的な目で見た。
永徳の唯一のインターンシップ枠は彼が手に入れた。灰原優歌がここに現れた意図は明らかだろう。
この女は本当に彼のことを諦めたと思っていたのに、こんなに早く、また以前の醜い本性を見せ始めた。