柴田裕香はついに後ろ盾を見つけたというわけか?
柴田裕也は唇を噛み締め、この件は厄介なことになりそうだと感じた。
……
その一方で。
柴田の母は嬉しそうに裕香の手を取り、「裕香、お兄ちゃんがもうすぐ帰ってくるのよ。この間、あなたが辛い思いをしたけど、お兄ちゃんが帰ってきたら、きっと助けてくれるわ」
「お兄ちゃんが帰ってくるの??」
柴田裕香は目を輝かせ、柴田の母を見上げた。
やっとお兄ちゃんが帰ってくる!
実は、柴田家の本当の実権者はお兄ちゃんなのだ。次男も三男もビジネスに興味がなく、これまでずっとお兄ちゃん一人が柴田氏を切り盛りしてきた。
「そうよ、何か辛いことがあったら、全部お兄ちゃんに話してね」
柴田の母も思わず笑みがこぼれた。「お兄ちゃんは誰に対しても冷淡そうに見えるけど、裕香、あなたも分かっているでしょう。お兄ちゃんはあなたの願いは何でも聞いてくれるのよ」
柴田裕香の目の奥に不気味な光が走り、また柴田の母に甘えるように言った。「だから、私はお兄ちゃんが一番大好き」
今回の灰原優歌に対する件で、柴田の父は既に彼女を疑い始めていた。
でも幸い、先日彼女が泣きながら走り去った時、柴田の父は疑いを払拭し、むしろ後ろめたさを感じていた。
……
夕方。
灰原優歌が帰宅すると、ソファに座っている男性の姿が目に入った。
「お兄さん」
灰原優歌は一声かけると、お風呂に入るため階段を上がろうとした。
しかし。
男性はタバコの吸い殻を消すと、ふと目を上げ、ゆっくりと口を開いた。
「優歌、お兄さんから相談があるんだけど」
だが。
灰原優歌は目の前の清楚で気品がある男性を見て、先日の彼の色気が溢れ出ていた姿を思い出した。
「……何?」
灰原優歌は彼の方へ歩み寄ったが、意識的に彼の目を見ないようにした。
「この前はなぜ怒ったの?」
久保時渡は一寸も逸らさない視線を灰原優歌に向け、何気ない口調で、語尾を引き延ばしながら言った。「お兄さんが優歌を困らせたのかな?」
この言葉は、とても普通のはずなのに。彼がこう言うと、なぜか妙に色っぽく聞こえ、顔が真っ赤になってしまう!
「……」
灰原優歌は衣装部屋で彼が言った言葉を思い出し、軽く微笑んだ。「そうよ。お兄さん、人を困らせるのが上手なんだから」
この時。