「こんにちは、佐藤知行君」
スティーブンはにこにこと笑顔で、ステージ上での冷たい態度は微塵も感じられなかった。
むしろ、なぜか人を惹きつける雰囲気があった。
「こんにちは……」
スティーブンは実は付き合いにくい人ではなかったが、佐藤知行は外国語が得意ではなく、二人のコミュニケーションは少し大変だった。
しかし。
食事が終わった後、スティーブンは灰原優歌が連れてきたこの少年が、医学の分野で非常に才能があることに気づいた。
スティーブンは突然、佐藤知行が雲城に来た予期せぬ喜びだと感じた。
「君は私たちの研究所のサマーキャンプに申し込んだんだね?」
スティーブンは思わず笑みを浮かべた。「大学はローシェルで学んでみないか?そうすれば、早めに私たちの研究所に触れることができるよ」
その言葉を聞いて、佐藤知行は箸を落としそうになった!
「本、本当にいいんですか??」
ローシェルの医学研究所は、大学院生からしか研修生を受け入れないことで知られていたのだ!!
「この前、優歌に頼まれた薬剤は、君のために作ったものだったんだろう」
スティーブンは軽く笑って言った。「優歌の友達なら、そんなに規則にこだわる必要はないよ」
佐藤知行はそれを聞いて一瞬呆然とし、自分の薬剤がスティーブンによって作られたことを知った……
その瞬間。
佐藤知行は隣で黙々と食事をする少女を見つめ、心の中で何かが静かに波立つのを感じた。
……
この日。
監督に休暇を申請し、灰原優歌の授業参観に行こうと考えていた柴田裕也は、突然一本の電話を受けた。
「裕也、最近実家に帰ったか?」
男性の低く落ち着いた声は、とても心地よかった。
しかし、柴田裕也は何故か警戒心を抱いた。彼は笑って言った。「数日後に帰るよ。兄さん、何かあったの?」
「別に。みんなへのお土産を用意しただけだ」
スイートルームにいるハンサムな男性は、黒い瞳の奥に潜む冷たさを隠し、何かを思い出したかのように優しさを浮かべた。「そうだ、優歌はどうしてる?」
柴田陸信が最初から優歌のことを尋ねるのを聞いて、柴田裕也は警戒心が一気に高まった!
以前、兄が海外に行っていた時は、優歌のことなど全く気にかけなかった!柴田裕香のことさえも同じだった!!