柴田の母は目を見開いて、信じられない様子で柴田の父を見つめた。
「いいわね、あなたも裕香のことを見捨てるの!??」
柴田の父は怒りを爆発させ、「見てみろよ、裕香は一体どうなってしまったんだ!?一度は故意じゃないかもしれないが、二度三度となったらどうなんだ??
優歌に何か起こるたびに、全部彼女が関係している!どうやって彼女を信じろというんだ??」
その言葉が落ちた瞬間。
突然、近くで物が落ちる音が響いた。
柴田の父と母が振り向くと、柴田裕香が目を赤くして、信じられない様子で悔しそうに父を見つめているのが見えた。
その時。
柴田の父も何となく慌てた。結局、二十年近く可愛がってきた子供なのだから。
「裕香……」
柴田裕香はすぐに顔を背け、目を赤くしたまま走り去った。
「全部あなたのせいよ!灰原優歌が裕香に勝るところなんてどこにあるの、あなたたちみんな少しずつ彼女の味方になっていくなんて!?」
柴田の母は心を痛め、地面に落ちた保温弁当箱を見て、すぐに拾い上げた。
「裕香は親孝行な子よ、あなたがそんなことを言うのを聞いたら、きっと辛いはずよ。」柴田の母も心配になった。
柴田の父は一瞬、複雑な気持ちと自責の念に駆られ、顔を背けて疲れた様子で眉間を揉んだ。
家族円満に暮らしたくないわけがないだろう?
しかし、あの時の不運な赤ちゃん取り違えで。今、二人の娘に直面して、どうすればいいのか全く分からない……
……
昼。
佐藤知行は病院の入り口で待っていて、なぜか心が落ち着かなかった。
そこへ、灰原優歌の声が聞こえた。
「佐藤。」
佐藤知行が振り向くと、灰原優歌が一人で歩いてくるのが見えた。「優歌、柴田お爺さんの具合はどう?」
「手術は成功したわ。」
灰原優歌は少し意外だった。佐藤知行が最初に心配したのが彼女のお爺さんだったことに。
彼女は、この人はローシェル医学研究所のことを気にしているはずだと思っていた。
「それは良かった。」
佐藤知行はほっとして、頷いた。
「そういえば、前に言ってた、あなたが好きなローシェル医学研究所の人って、誰?」灰原優歌が尋ねた。
佐藤知行はそれを聞いて、さらに緊張した。
「……スティーブンさんです。」
灰原優歌:「……」
この瞬間。
佐藤知行も突然、昨日ネット上で起きたことを思い出した。