雲田卓美の目の奥に暗い色が走った。
それは以前、柴田裕也がローシェルのオークションで買った、たった一本のものだった。
当初、彼女は柴田裕也が自分にプレゼントしてくれると思っていたが、まさか柴田裕香にプレゼントするとは。柴田裕也がどれだけ妹思いかがよく分かる。
そう考えると、雲田卓美は確信した。灰原優歌が手段を使って、柴田裕也と柴田裕香の関係を悪くしたのだと。
結局、これは十数年来の兄妹の絆なのだから。
そう思うと、雲田卓美は笑みを浮かべ、再び柴田裕香に身を屈めて言った。「裕香、この件は卓美お姉さんが解決するから、あなたは楽しんでいればいいわ」
「卓美お姉さん、あなた……」
柴田裕香は眉をひそめ、とても心配そうな様子だった。
「私は雲田家の人間よ。誰もあなたのことを言えないわ。私に手を出せる人もいないわ」